日. 11月 10th, 2024

私はバツイチである。子供はいない。

夏目漱石のように書き出してしまったが、離婚歴があるおっさんだという事である。大したことではない。「ええっ!知らなかった!がっかりです!」と言われても仕方ない。

それで、マッチングアプリなどをやっているのだが、正直なところ真剣に結婚を考えるにはいろいろ難しい。ならどうしてマッチングアプリなんかをやっているかというと、あまりにも友達がいないからである。

横浜にいた時などは、ありがたい事に多くの友人に恵まれ、よく食事や酒の席などに行っていた。しかし、盛岡に引っ越してきて、自分の事を誰も知らないところに行っても友人などもできることなく、食事に行くのも家族とばかりである。

これでは精神衛生上よくない。交友関係をなんとかしなければ、と思い、私はグーグル先生に「友達を作る」と打ち込んだ。すると出てきたのが「マッチングアプリ比較サイト」である。

それまで、マッチングアプリというものに頼る必要がなかった。結婚を求めていなかったし、そもそも恋愛を求めるなら、たくさんいる友人の中にときめきを求める方が早い。

しかし、「マッチングアプリで友人をつくる」というのは本当に可能なのか?という疑問はあった。なにしろこっちは「ちょっと時々飲みに行ける相手」を探している。そんな奴が「恋愛結婚ガチ勢」の中に入っていいのか。スケートで言えば、3回目くらいのスケート経験者が五輪の最終滑走前の練習に混ざるようなものだ。

というわけで、恐る恐るマッチングサイトに登録してみたところ、案の定「真剣に出会い求めてます」という人の集まりだった。しかし、マッチングサイトに登録してみて学びはあった。それは、「共通の趣味で盛り上がろう」という機能(コミュニティ)という機能である。

これだ。恐らく自分のように、普通に友達が欲しい人は多いに違いない。では、共通のコミュニティを作ってみんなでワイワイ話しながら人と繋がっていくSNSを自分で開発できないか、これで私は友達が作れてひと儲けできて一石二鳥、と思ったが、どう考えてもできあがるSNSが「ミクシィ」だったのでやめた。

ところで、マッチングサイトを眺めていて驚いたのが、「子供が欲しい」と考えている女性が自分が思っているよりずっと多かった事だ。よく考えたら当然である。自分が見ているサンプルが「課金してでも結婚がしたい」という女性だけだからだ。自然と「子供が欲しい」という人に偏るのだ。

そして、岩手という土地柄もあるのだろう。首都圏に条件を変えれば、子供は欲しくないという女性も増えるのだろうか。

昨今、少子化や晩婚化の問題をよく耳にする。その背景には、「子供をつくらないという生き方」「結婚をしないという生き方」というのが市民権を得たというのもあるように思う。そして、それと同じような要因として、「結婚に対する不安」「子供をもつ事への不安」というのもあるように思う。結婚については主に経済面、子供については経済面と「自分に子供を育てる事ができるだろうか」という不安があるように思う。

しかし、マッチングアプリを見ていると、子供が欲しい女性のなんと多いことか。本当に少子化が叫ばれているのかと疑問に思うほどだが、なにしろ先ほども言った通り、自分が見ているサンプルは「結婚したい女性」だ。

話は変わるが、高校生の時に少しだけ悩んだ事がある。それは「大学に行っていい会社に就職をする事が正しいのか」という事だ。誰もが通るような通らないような、微妙なラインの悩みである。

いま、その悩みに関しては正解を断言できる。それは「その悩みを考える時間を勉強に割いた方がいい」である。だいたい、うまく行っている人はその悩みに悩まされていない気がする。余計な事は考えない人の方が圧倒的に安定している。

そこで、結婚と出産の話に戻る。いま、「どうして若い人は若いうちに結婚しないのか」「どうして出生率は下がる一方なのか」というのがめちゃくちゃ考えられている。そして、それに付随するDVや虐待、貧困などの問題も報じられている。自分は結婚して妻に暴力を振るわないだろうか、自分は出産して子供を虐待しないだろうか、私たちは子供を幸せにできるだろうか…。

これは、ものすごく日本らしい問題のように思う。確かに経済的に裕福なら結婚も出産もしやすいかもしれない。だが、経済や社会保障だけが問題なら、「世界中でいちばんセックスする」で有名なギリシャ人はセックスをやめる。ギリシャだけではない。特に欧米でみられる都市部の貧困層の増加を見るに、世界中のかなりの国は子供を作っている場合ではない気がする。

それでも少子化が世界中の問題にならないのは、世界が日本よりだいぶ楽観的だからな気がする。日本人が悲観的と言い変えてもいい。おそらく世界中では、結婚したら幸せになれるし、子供が生まれたら最高に幸せなのだ。抱き合っていれば金がない事など頭から吹っ飛ぶし、セックスをしながら将来の事など考えない。将来のことが不安になるレベルで相手の性癖がゆがんでいたらそれは結婚しない方がいいだろうが、恐らく99%くらいの人は大丈夫だろう。

この「なんとかなるやろ」というノリで、うまいこと結婚してうまいこと出産した人たちは、特にニュースになる事はない。たまにニュースで見かける「将来について」みたいな話に、子供を抱きながら「不安ですよねー」とか答えている人は、大概なんとかなると思う。確実にここまでなんとかなってきた雰囲気が出ている。本当の人生の成功者は、人々の話題にもならない人なのだ。

政治家が「みなさん!普通になんとかなります!」と叫んだら、そこそこ叩かれると思うし、金持ちが言ってもたぶん響かない。俺みたいな貧乏人が言ったら許されると思うが、たぶん有名になった途端に叩かれる。この記事がめちゃくちゃ読まれるのも怖いので、ひっそりとやっていきたい。