水. 6月 7th, 2023

 まずは、元気だった頃の話から始まります。

 僕は当時、派遣社員として、某通信系企業のコーポレートサイトの仕事をしていました。仕事の内容は、サイトのアクセスログを集計してレポートをひたすら作成しクライアントに報告する、というものでした。毎日ExcelとPowerPointと向き合う仕事です。

 その仕事は、僕にとってはとても快適な仕事でした。数値が下がっても自分に責任がなかったし、数値を上げるのはクライアントの仕事なので、僕は粛々とレポートを提出し、助言を求められた時のみ助言する、というスタンスでした。

 心療内科を受診するきっかけとなったのは、仕事とはまったく別の、人間関係での悩みでした。友人とのちょっとした意見のすれ違いで些細な悩みを抱えてしまったことで、塞ぎ込むようになり、夜に眠れなくなったのです。とはいえ、睡眠薬を処方してもらうの自体は初めてではなかったし、その時も睡眠薬を処方してもらうつもりで、職場の近くの心療内科を訪ねました。

 その時、僕に出された診断は、「むずむず脚症候群」でした。聞いたこともありません。

 その病気は、名前の通り、「脚に虫が這うようなむずむずした感覚を覚え、目が覚めてしまう」というものです。実感がありませんでした。ひとまず、その病気を治す薬を処方されました。そして医師に言われたのは「眠くなりますが、眠れるだけ寝てください。それは脳が疲れている証拠です。」ということでした。

 その後の治療は地獄でした。抑うつ状態はどんどん酷くなっていくのに、「寝てください」としか言われないのです。そして、いくら寝ても24時間ものすごい眠気に襲われ続けました。家に20時ごろ帰宅したら寝て、翌日8時に起き上がれたら上々、起き上がれず会社に電話して午後から出社する日が増えました。そして、出社して頭がボーッとする中で仕事をこなしていましたが、リフレッシュルームに15分だけ休憩に行くつもりで、気づいたら1時間寝ていた、というような日が続きました。

「いくら寝ても改善されない」と医師にも相談しましたが、診断も治療方針も変わりませんでした。遅刻や欠勤が増え、出社してもサボって寝ている時間が多い、そういう状況が続いているうちに、派遣社員としての契約を切られました。

 契約が終了した僕は、かつての上司に相談し、別の会社で契約社員として働き始めました。それと同時に、別の病院に通い始めました。そこでやっと「うつ」という診断がつき、抑うつ状態の治療が始まりました。

 新しい会社では、アクセスログのレポートの他に、いわゆる「Webディレクター」の仕事がメインになりました。ざっくり言うとWebサイトを管理する仕事ですが、ページ作成の指示書を作成し、見積もりを作り、上司に確認して承認をもらい、外注に出して、外注先から受領したデータをテスト環境にアップしてクライアントに確認しOKをもらい、指示された時間に本番環境で後悔する、というような仕事です。

 僕は、その仕事が絶望的にできませんでした。「この作業にデザイナーの仕事がこのくらい発生するから、見積もりはいくらで…」という「計画を立てる」作業が、絶望的に苦手だという事に後に気づきました。しかし、「Webの仕事をしてステップアップしていく以上、この道は避けて通れない。この仕事をこなせるようにならなければ」と思いました。この後、「Webディレクター」の仕事を6年ほど続けましたが、会社は5社ほどを転々とし、2度の休職を経験しました。

 そして、その過程で「双極性障害(2型)」という診断がつきました。

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